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	<title>御徒町凧のブログ。</title>
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	<pubDate>Mon, 31 May 2010 02:35:27 +0000</pubDate>
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		<title>そしてセルマネロは長い夢の中に</title>
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		<pubDate>Mon, 31 May 2010 02:31:57 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[そしてセルマネロは長い夢の中にいた。
夢の中でセルマネロはまた新しい夢を見ようとしていた。
チョコレートグレイに深く染まった湖のほとりでセルマネロは膝を抱いていた。
膝を抱いていたというのは、膝を抱いているという気分のことだと、セルマネロは夢の中で誰にともなく言い聞かせてた。
見たこともないような、そこに咲いている花が、ゆっくりと蕾を開いているのが分かった。甘い南の島の匂いが漂っている。セルマネロの南の島には舟は浮かんでいなかった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>そしてセルマネロは長い夢の中にいた。</p>
<p>夢の中でセルマネロはまた新しい夢を見ようとしていた。</p>
<p>チョコレートグレイに深く染まった湖のほとりでセルマネロは膝を抱いていた。</p>
<p>膝を抱いていたというのは、膝を抱いているという気分のことだと、セルマネロは夢の中で誰にともなく言い聞かせてた。</p>
<p>見たこともないような、そこに咲いている花が、ゆっくりと蕾を開いているのが分かった。甘い南の島の匂いが漂っている。セルマネロの南の島には舟は浮かんでいなかった。</p>
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		<title>セルマネロのノートには</title>
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		<pubDate>Sat, 03 Apr 2010 02:58:45 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[セルマネロのノートにはいくつかの言葉が書かれている。
文字になる前の記号のようなものから、景色を炎で炙ったような流れる線のようなものまで。
それらは言葉になることを望んでいるのだろうか。
星の瞬きを尻目に、セルマネロは大きく寝返りを打った。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>セルマネロのノートにはいくつかの言葉が書かれている。</p>
<p>文字になる前の記号のようなものから、景色を炎で炙ったような流れる線のようなものまで。</p>
<p>それらは言葉になることを望んでいるのだろうか。</p>
<p>星の瞬きを尻目に、セルマネロは大きく寝返りを打った。</p>
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		<title>もっと四月に。</title>
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		<pubDate>Fri, 02 Apr 2010 05:15:27 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[もっと四月になっていく。
今日は湿度が高くって、目ん玉がよく動く。
人間がまだ植物だったころ、太陽はもっと大きかったのだろう。
お皿に乗っかった季節の野菜が、いじけてる。
今日の野菜はバカみたい。油なんか吸っちゃって。
ぼくはクチャクチャ鳴らしながら、野菜を平らげる。
共食い。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>もっと四月になっていく。</p>
<p>今日は湿度が高くって、目ん玉がよく動く。</p>
<p>人間がまだ植物だったころ、太陽はもっと大きかったのだろう。</p>
<p>お皿に乗っかった季節の野菜が、いじけてる。</p>
<p>今日の野菜はバカみたい。油なんか吸っちゃって。</p>
<p>ぼくはクチャクチャ鳴らしながら、野菜を平らげる。</p>
<p>共食い。</p>
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		<title>四月になったよ。</title>
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		<pubDate>Thu, 01 Apr 2010 07:09:30 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[四月になって、
暖かい日差しにぼくは目覚める。
少しだけ風が強かったけど、歩いて、次の場所へ向かった。
サンドイッチとカフェラテを飲み、感情を、文字にして、並べてみる。
言葉は風にのって、遠い所からやってくる。
いたるところに矢印があって、みんなペンギンみたいにクルクルしている。
笑っちゃいけないと思ったけど、やっぱり笑っちゃう。
とりあえず、緑色のボタンを押してみた。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>四月になって、</p>
<p>暖かい日差しにぼくは目覚める。</p>
<p>少しだけ風が強かったけど、歩いて、次の場所へ向かった。</p>
<p>サンドイッチとカフェラテを飲み、感情を、文字にして、並べてみる。</p>
<p>言葉は風にのって、遠い所からやってくる。</p>
<p>いたるところに矢印があって、みんなペンギンみたいにクルクルしている。</p>
<p>笑っちゃいけないと思ったけど、やっぱり笑っちゃう。</p>
<p>とりあえず、緑色のボタンを押してみた。</p>
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		<title>ぼんやりした光の中で</title>
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		<pubDate>Wed, 17 Mar 2010 10:49:07 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[ぼんやりした光の中で、笑いかけてくる人影がある。
人影というか気配なんだけど、気配は人影だった。
ぼくは今、眠りの中にいて、この眠りはいったい誰のものなのかということを考えてしまっている。眠りの中で、ぼくはぼく以外の意識に支配されていて、ぼくはもはやぼくの眠りの中で人格を失ってしまっている。
夕焼け空が視界いっぱいに広がっていて、夕焼けは暗闇に浸食されてった。徐々に。
おそろしいほど正確に。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>ぼんやりした光の中で、笑いかけてくる人影がある。</p>
<p>人影というか気配なんだけど、気配は人影だった。</p>
<p>ぼくは今、眠りの中にいて、この眠りはいったい誰のものなのかということを考えてしまっている。眠りの中で、ぼくはぼく以外の意識に支配されていて、ぼくはもはやぼくの眠りの中で人格を失ってしまっている。</p>
<p>夕焼け空が視界いっぱいに広がっていて、夕焼けは暗闇に浸食されてった。徐々に。</p>
<p>おそろしいほど正確に。</p>
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		<title>布団の中へ滑り込むように</title>
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		<pubDate>Tue, 02 Mar 2010 09:36:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[布団の中へ滑り込むように、いや、本当に滑り込んだのかもしれない。と、セルマネロは思った。布団は部屋の沈黙を吸い込み、ひんやりとセルマネロの体を包み込んだ。布団はセルマネロの体温と同調するかのように、少しずつその温度を上げる。
布団の中で、セルマネロは目を閉じていた。
暗闇がまぶたの裏から溢れだし、夜空の星々を一つずつ塗りつぶしてゆく。そんなイメージがセルマネロの枕元でクルクルしていた。
窓の外に風が吹いているのが分かる。カタカタと震える窓は、懐かしい話を語りかけてくる古い友人だった。眠りは、どの辺まで来ていたのだろう。
木のボートに乗って、眠りは来ていた。
あてもなく漂うボートは、月の光に導かれていった。
セルマネロは眠りの中で、笑い声を聞いた。
それは限りなく音楽に近かった。
音楽が止まない夜、テーブルの上の血の跡が月明りに輝く。セルマネロが今よリずっと幼かった頃に、工作用の削りナイフで誤って手の平を傷つけた時に流れた血が作ったテーブルの跡。怒られることが嫌で、セルマネロは泣くこともせずに、血をテーブルに擦り付けていた。
その夜も、大きな月が空に昇っていた。
それは間違いのないことだった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>布団の中へ滑り込むように、いや、本当に滑り込んだのかもしれない。と、セルマネロは思った。布団は部屋の沈黙を吸い込み、ひんやりとセルマネロの体を包み込んだ。布団はセルマネロの体温と同調するかのように、少しずつその温度を上げる。</p>
<p>布団の中で、セルマネロは目を閉じていた。</p>
<p>暗闇がまぶたの裏から溢れだし、夜空の星々を一つずつ塗りつぶしてゆく。そんなイメージがセルマネロの枕元でクルクルしていた。</p>
<p>窓の外に風が吹いているのが分かる。カタカタと震える窓は、懐かしい話を語りかけてくる古い友人だった。眠りは、どの辺まで来ていたのだろう。</p>
<p>木のボートに乗って、眠りは来ていた。</p>
<p>あてもなく漂うボートは、月の光に導かれていった。</p>
<p>セルマネロは眠りの中で、笑い声を聞いた。</p>
<p>それは限りなく音楽に近かった。</p>
<p>音楽が止まない夜、テーブルの上の血の跡が月明りに輝く。セルマネロが今よリずっと幼かった頃に、工作用の削りナイフで誤って手の平を傷つけた時に流れた血が作ったテーブルの跡。怒られることが嫌で、セルマネロは泣くこともせずに、血をテーブルに擦り付けていた。</p>
<p>その夜も、大きな月が空に昇っていた。</p>
<p>それは間違いのないことだった。</p>
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		<title>セルマネロは星空を眺めながら</title>
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		<pubDate>Mon, 11 Jan 2010 15:10:07 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[セルマネロは星空を眺めながら、宇宙の始まりについて考えを巡らせていた。広がり続けると言われている宇宙のその先にいったいなにがあるのかと。
宇宙とは想像力の限界のことだと、図書館にある本に書かれていたことがセルマネロの心にずっと残っていて、宇宙を眺めながらその言葉を直接思い出したわけではなかったけど、セルマネロは自分の想像力を遥か頭上の世界へと柔らかくリリースしていた。
宇宙は明るかった。星々の輝きさえ霞むほど宇宙それ自体がほんのり発光しているかのようだった。そして宇宙を覆う闇は段階に分かれていて性質の違う存在を誇示しているのだった。
セルマネロは宇宙を眺めながら、様々な物語を紡いでいた。
一つとして同じ物語はなく、しかし、すべての物語がお互いに影響を与えながら流れているのだった。セルマネロの頬を涙が伝う。涙が薄く湿った唇に触れたとき、セルマネロは味覚から自分が泣いていることに気付くのだった。
と同時に家族のことを思う。
セルマネロは白鳥の背中に乗って、夕焼けを目指してる旅人の孤独のようなものをなぜか心に留めているのだった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>セルマネロは星空を眺めながら、宇宙の始まりについて考えを巡らせていた。広がり続けると言われている宇宙のその先にいったいなにがあるのかと。</p>
<p>宇宙とは想像力の限界のことだと、図書館にある本に書かれていたことがセルマネロの心にずっと残っていて、宇宙を眺めながらその言葉を直接思い出したわけではなかったけど、セルマネロは自分の想像力を遥か頭上の世界へと柔らかくリリースしていた。</p>
<p>宇宙は明るかった。星々の輝きさえ霞むほど宇宙それ自体がほんのり発光しているかのようだった。そして宇宙を覆う闇は段階に分かれていて性質の違う存在を誇示しているのだった。</p>
<p>セルマネロは宇宙を眺めながら、様々な物語を紡いでいた。</p>
<p>一つとして同じ物語はなく、しかし、すべての物語がお互いに影響を与えながら流れているのだった。セルマネロの頬を涙が伝う。涙が薄く湿った唇に触れたとき、セルマネロは味覚から自分が泣いていることに気付くのだった。</p>
<p>と同時に家族のことを思う。</p>
<p>セルマネロは白鳥の背中に乗って、夕焼けを目指してる旅人の孤独のようなものをなぜか心に留めているのだった。</p>
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		<item>
		<title>ヴィオラインを弾きながら</title>
		<link>http://kite-web.jp/?p=758</link>
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		<pubDate>Wed, 09 Dec 2009 05:31:33 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[ヴィオラインを弾きながら、メンペイムは音について考えていた。音はどうして感じられるのかという、素朴な疑問だった。
弦と弓が擦れる瞬間に振動が生まれ、どうやらそれが音として知覚されている。同じ音でも心地よい音と不心地な音とがあった。
ヴィオラインの奏でるフレーズに身を委ねる。
その夜、メンペイムは宇宙旅行をしているような気分だった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>ヴィオラインを弾きながら、メンペイムは音について考えていた。音はどうして感じられるのかという、素朴な疑問だった。</p>
<p>弦と弓が擦れる瞬間に振動が生まれ、どうやらそれが音として知覚されている。同じ音でも心地よい音と不心地な音とがあった。</p>
<p>ヴィオラインの奏でるフレーズに身を委ねる。</p>
<p>その夜、メンペイムは宇宙旅行をしているような気分だった。</p>
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		<item>
		<title>どうして詩を書くのかと</title>
		<link>http://kite-web.jp/?p=754</link>
		<comments>http://kite-web.jp/?p=754#comments</comments>
		<pubDate>Tue, 13 Oct 2009 15:27:08 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[どうして詩を書くのかと問われたらなんて答えたらいいのだろうかとセルマネロは部屋の床に寝転がり考えていた。セルマネロは詩を書いていることを公言していなかったから、この問いはもはや自分から自分への問いに近いものだった。
学校に行くようになってから、セルマネロは詩を書き留めるということを始めたのだったが、詩のようなものを心の中で構築することは言語を習得することと同くして行っていたのだった。だから、学校に行くということがセルマネロを詩に向かわせたのではなく、教室という空間の緩い拘束が、ただ書くという行為を促しただけで、学校と詩の相関性はほとんどないと言ってしまっていいことではあったが、書かれた詩を視覚的に認識することと書くという単純な運動がセルマネロになんらかの変化を与えたことは事実ではあった。
セルマネロは詩というものを理解していなかった。詩を書くということが、セルマネロにとって自然なことであったため、改めて考える機会がほとんどなかったのだ。書かれた詩を、後になって見返したとき、どうしてこんな詩を書いたんだろうと自省することはしばしばあったが、その行為はトイレで自分の排泄物を流し去る前に、瞬間眺めてしまう時となんら変わりのない無意味なことだった。
ニックタックは帰宅すると父親のポンヴェニックに付いて市場へ行くのが、毎日の習慣だった。ポンヴェニックは自宅でリストランを営んでいて、日替わりのオードブルの食材を市場で仕入れているのだった。ニックタックは市場の喧噪を好んでいた。採れたてのベジーやフィッシュの匂いはニックタックの好奇心を無尽蔵に刺激したし、なによりも市場に訪れる人たちの活気がニックタックの性分に合っていたのだった。
道すがらニックタックはポンヴェニックに訊いた「今日は何をメインにするの？」
ポンヴェニックは早足を緩めることなく答えた「まだ決めてない」
「そっか、じゃあ、オレが決めてもいい？」とニックタックは返した。
「それはダメだ」とポンヴェニック。
「どうして？」とニックタック。
「オレの店だから」とポンヴェニック。
この時だけ、ポンヴェニックは振り返り、ニックタックの表情をうかがった。しかし、ニックタックは暮れる夕焼けに視線を奪われていて、その瞬間に二人の視線が合わさることは永遠になかった。
「それもそうだねー」と、気のない返事をしたニックタックは、今日学校であったことを思い返してた。そして、アフターランチの運動の時に、パトムに言われた何かが気に触ったことが蘇ったのだけれど、それが具体的に何だったのかを思い出せず、根っこの不安定な不愉快に胸のあたりをモヤモヤとくすぐられているような感じになり、少しだけ内股で歩いてしまっていたが、ニックタックにその自覚はなかった。
しばらく二人は無言で歩いていた。沈黙は不均衡な足音に消されていた。ポンヴェニックは誰にともなく「涼しくなったな」と言った。
それは誰にも聞かれることのない、純粋なつぶやきだった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>どうして詩を書くのかと問われたらなんて答えたらいいのだろうかとセルマネロは部屋の床に寝転がり考えていた。セルマネロは詩を書いていることを公言していなかったから、この問いはもはや自分から自分への問いに近いものだった。</p>
<p>学校に行くようになってから、セルマネロは詩を書き留めるということを始めたのだったが、詩のようなものを心の中で構築することは言語を習得することと同くして行っていたのだった。だから、学校に行くということがセルマネロを詩に向かわせたのではなく、教室という空間の緩い拘束が、ただ書くという行為を促しただけで、学校と詩の相関性はほとんどないと言ってしまっていいことではあったが、書かれた詩を視覚的に認識することと書くという単純な運動がセルマネロになんらかの変化を与えたことは事実ではあった。</p>
<p>セルマネロは詩というものを理解していなかった。詩を書くということが、セルマネロにとって自然なことであったため、改めて考える機会がほとんどなかったのだ。書かれた詩を、後になって見返したとき、どうしてこんな詩を書いたんだろうと自省することはしばしばあったが、その行為はトイレで自分の排泄物を流し去る前に、瞬間眺めてしまう時となんら変わりのない無意味なことだった。</p>
<p>ニックタックは帰宅すると父親のポンヴェニックに付いて市場へ行くのが、毎日の習慣だった。ポンヴェニックは自宅でリストランを営んでいて、日替わりのオードブルの食材を市場で仕入れているのだった。ニックタックは市場の喧噪を好んでいた。採れたてのベジーやフィッシュの匂いはニックタックの好奇心を無尽蔵に刺激したし、なによりも市場に訪れる人たちの活気がニックタックの性分に合っていたのだった。</p>
<p>道すがらニックタックはポンヴェニックに訊いた「今日は何をメインにするの？」</p>
<p>ポンヴェニックは早足を緩めることなく答えた「まだ決めてない」</p>
<p>「そっか、じゃあ、オレが決めてもいい？」とニックタックは返した。</p>
<p>「それはダメだ」とポンヴェニック。</p>
<p>「どうして？」とニックタック。</p>
<p>「オレの店だから」とポンヴェニック。</p>
<p>この時だけ、ポンヴェニックは振り返り、ニックタックの表情をうかがった。しかし、ニックタックは暮れる夕焼けに視線を奪われていて、その瞬間に二人の視線が合わさることは永遠になかった。</p>
<p>「それもそうだねー」と、気のない返事をしたニックタックは、今日学校であったことを思い返してた。そして、アフターランチの運動の時に、パトムに言われた何かが気に触ったことが蘇ったのだけれど、それが具体的に何だったのかを思い出せず、根っこの不安定な不愉快に胸のあたりをモヤモヤとくすぐられているような感じになり、少しだけ内股で歩いてしまっていたが、ニックタックにその自覚はなかった。</p>
<p>しばらく二人は無言で歩いていた。沈黙は不均衡な足音に消されていた。ポンヴェニックは誰にともなく「涼しくなったな」と言った。</p>
<p>それは誰にも聞かれることのない、純粋なつぶやきだった。</p>
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		<title>そこは人のいない真っ暗な宇宙</title>
		<link>http://kite-web.jp/?p=744</link>
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		<pubDate>Tue, 22 Sep 2009 14:15:05 +0000</pubDate>
		<dc:creator>御徒町 凧</dc:creator>
		
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[そこは人のいない真っ暗な宇宙だった。人のいない宇宙ということを考えている者もいない、暗闇。本当のことを言うと、それが宇宙なのかどうかも分からない。宇宙という言葉が一番しっくりくるだけのことだ。
暗闇の向こうに光が射している。光によって暗闇は本当の暗闇となった。その光の方向からうっすらと音が聞こえる。鈍く低い音が「ゴロンゴロン」と繰り返されている。しばらくすると音は無くなった。無くなったのか聞こえなくなったのか、その違いさえ定かではなかった。
宇宙に感情はない。
ひっそりとした孤独があるだけだった。
孤独に色をつける必要があるのだろうか。
必要を求める必要があるのだろうか。
あるということがあるのだろうか。
暗闇の先に視線を感じる。それは、何もかもを吸い込んでしまう仄かな気配だった。
]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>そこは人のいない真っ暗な宇宙だった。人のいない宇宙ということを考えている者もいない、暗闇。本当のことを言うと、それが宇宙なのかどうかも分からない。宇宙という言葉が一番しっくりくるだけのことだ。</p>
<p>暗闇の向こうに光が射している。光によって暗闇は本当の暗闇となった。その光の方向からうっすらと音が聞こえる。鈍く低い音が「ゴロンゴロン」と繰り返されている。しばらくすると音は無くなった。無くなったのか聞こえなくなったのか、その違いさえ定かではなかった。</p>
<p>宇宙に感情はない。</p>
<p>ひっそりとした孤独があるだけだった。</p>
<p>孤独に色をつける必要があるのだろうか。</p>
<p>必要を求める必要があるのだろうか。</p>
<p>あるということがあるのだろうか。</p>
<p>暗闇の先に視線を感じる。それは、何もかもを吸い込んでしまう仄かな気配だった。</p>
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