ニューヨークの雑踏で
迷子のライオンが呟いた
通りを行く車やシマウマは
ちょびっとだけ振り返り
また慌ただしく西を目指した
作りかけのスクランブルエッグと
絵日記みたいなニュースペーパーが
オットセイとカモシカを苛立たせている
丸いものをぜんぶ
四角い部屋に押し込んで
目に見えないアレルギーで病院は長蛇の列
あいさつの語尾は誰も聞いていないから
太陽は少しだけ巻きで地平線に隠れちゃう
真夜中のライブハウスでロックスターの影が踊る
音楽がどこにもなくたって腰を上手に振りながら
大きな三半規管に立ち尽くし
真っ白な星条旗が休日にはためいた
あてもなく走りつづけているようで
貨物列車はいつだって目的地を知っている
紙芝居の三段論法は油まみれ
チャイナタウンから特上のお茶の葉が盗まれる
ふかふかのベッドで眠るペンギンの夢に
アザラシや白クマはお呼びでなくて
人のいない図書館の隅でぼくが見つけた
手あかのない生まれたての言葉
小さなかわいい箱にしまって
それじゃそろそろ出かけよう
大きめの荷物は先に送る形で