お尻にまとわりつく蝿を
惰性の尻尾で払い除け
食べたい時に食べ
眠りたい時に眠る
狭い厩舎の中でさえ
無辺大の草原に変えた
彼には卓越した想像力があり
添い遂げる相手も自由に選択できた
遠く聴こえるマービンゲイを
いつのまに口遊み
はち切れそうな腹部を
他人事のようにぶら下げている
その気になれば二足歩行で
あの柵を越えることもできたが
いつまでもここにいてほしいと
仲間たちの物言わぬ温もりが
心の深い所で告げている
時折無性に喉が乾いて
大量の虫が身体中を覆ったが
幸せという鎖が
細くなった角を繋いでいた
記憶を頼りにモーと鳴こうしたら
咽せるような咳が出るだけで
心地よい眠りにまた身を任せた