思うよりも先に言葉があれば
それでいいといつも思う
西海岸の青い海に雲は流れ
その下を自転車で行く
風の形状に触れる必要などなく
不確かな瞬間の連続に
俺の下腹は断層となり
たまに水面を弾くイルカの表情は
ことのほか爽やかで
周囲に微笑みを運んだ
大きな迷路を彷徨い続けるうちに
出口のことを忘れてしまう
入口がどこだったかも定かではないまま
乾いた靴音が室外機に煽られて
人々の鼓膜を揺さぶる
大切なことは今見えているものが
正しく狂っていること
身につけたもの全てを捨ててしまえ
手に入れたもの全てをなくしてしまえ
絶対、大丈夫
思うより前に聴こえた
誰かの言葉が
錆びた鉄塔に引っかかっている