彼らには同じ皺があった
笑えば目尻が下がり
一人の時は遠くを見つめている
使い古された道具の類がそこかしこに転がっていて
手慰むように皆がそれに触れた
彼らには序列がなかった
あるのはただ複雑化されたいくつかのルール
ネットワークと呼ぶほどのものではなく
子供でも考えつくような太陽と月の因果
森羅万象から洩れたあらゆる葛藤がその場所でのみ展開し
エネルギーだけが無闇に消費された
喜びと怒りは見事に相殺され
なにごともなかったかのようという芝生の上を
一陣の風が吹き抜け回す風車
鳥は神と称され
コーヒーとハイボールで身は清められる
すり減った靴底のゴムは天然樹脂で
歯の間の脂から若葉が芽吹く
季節は小刻みに交換され
天と人と地を際限なく分かつ
時たま届く便りには
「オゲンキデスカ」と文字が踊り
私はダンスホールの隅で膝を抱えていた
あの暗い天井からぶら下がるミラーボールに
拡散された光の粒を顕微鏡に晒し
まず名付けることから始めようと思った
それはある春の細事