母親から電話があり
父親が病院で検査しているという
尿の出が悪く
朝から具合が良くないのだという
気がつけば父親も67か68才くらいになる
これまで病院に縁がなかったのが不思議なくらいで
電話を受けた時さすがに少し動揺した
けど母親はたいして取り乱しておらず
とりあえず電話したのだという
しまいには「あのクソオヤジ」と悪態をつきだしたので
だいぶ安心した
父親は長いこと不動産の取り扱いをしていたのだけど
不景気にともないほとんど仕事がなくなり
最近ではタクシーの乗務員をしている
一回の乗務が24時間だったかで
聞く限りではかなりハードな仕事だ
だけど人懐っこく口下手で
車の運転が嫌いではない父親には
どこか天職なのかもしれないと
ぼくもぼくで思うようになった
生きていれば必ず死ぬわけだから
順序が逆にならないかぎり
親の病気や事故は必然的に訪れるのだろう
やがて父も母も
場合によっては二人いる兄も死に
生まれたときから知っている家族がみんないなくなった時
ぼくは何を思うのだろう
どこにもない
六角レンチを探しながら
そんなことを考えている