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詩

六角レンチ

母親から電話があり

父親が病院で検査しているという

尿の出が悪く

朝から具合が良くないのだという

気がつけば父親も67か68才くらいになる

これまで病院に縁がなかったのが不思議なくらいで

電話を受けた時さすがに少し動揺した

けど母親はたいして取り乱しておらず

とりあえず電話したのだという

しまいには「あのクソオヤジ」と悪態をつきだしたので

だいぶ安心した

父親は長いこと不動産の取り扱いをしていたのだけど

不景気にともないほとんど仕事がなくなり

最近ではタクシーの乗務員をしている

一回の乗務が24時間だったかで

聞く限りではかなりハードな仕事だ

だけど人懐っこく口下手で

車の運転が嫌いではない父親には

どこか天職なのかもしれないと

ぼくもぼくで思うようになった

生きていれば必ず死ぬわけだから

順序が逆にならないかぎり

親の病気や事故は必然的に訪れるのだろう

やがて父も母も

場合によっては二人いる兄も死に

生まれたときから知っている家族がみんないなくなった時

ぼくは何を思うのだろう

どこにもない

六角レンチを探しながら

そんなことを考えている

二〇一二年〇五月二七日(日)

六角レンチ

母親から電話があり

父親が病院で検査しているという

尿の出が悪く

朝から具合が良くないのだという

気がつけば父親も67か68才くらいになる

これまで病院に縁がなかったのが不思議なくらいで

電話を受けた時さすがに少し動揺した

けど母親はたいして取り乱しておらず

とりあえず電話したのだという

しまいには「あのクソオヤジ」と悪態をつきだしたので

だいぶ安心した

父親は長いこと不動産の取り扱いをしていたのだけど

不景気にともないほとんど仕事がなくなり

最近ではタクシーの乗務員をしている

一回の乗務が24時間だったかで

聞く限りではかなりハードな仕事だ

だけど人懐っこく口下手で

車の運転が嫌いではない父親には

どこか天職なのかもしれないと

ぼくもぼくで思うようになった

生きていれば必ず死ぬわけだから

順序が逆にならないかぎり

親の病気や事故は必然的に訪れるのだろう

やがて父も母も

場合によっては二人いる兄も死に

生まれたときから知っている家族がみんないなくなった時

ぼくは何を思うのだろう

どこにもない

六角レンチを探しながら

そんなことを考えている

二〇一二年〇五月二七日(日)

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