これは誰の記憶だろう
人のいないベランがまた
徐々に輪郭を待ち始める
この手紙があなたの下に届く頃
私の生きている今日は
もうこの今日ではないだろう
海を
時を
想いを
越えて
あなたはわたしに出会うだろう
喜びが軒先で濡れている
哀しみが駐車場で割れている
過去を称えたコーヒーカップ
全てをここに留めている
こともなげに
喉元に残る静寂
汚れた動物園の孔雀
震える指先を勇気と名付けた
消え入りそうな気配から
まぎれもなく漂ってくる
未知という風
なにかが焦げる香ばしい匂い