百円玉に紛れて五十円玉があり
三百円の支払いに五十円足りない
少しだけ小さいサイズにも
特徴的な惚けたような表情にも
小銭入れの中じゃ分からなかった
消費税が上がったことで
いつも行くサウナが八百円に値上がりして
そこで買う炭酸水が百五十円で
千円札を渡せば五十円玉が帰ってくる
おかげで財布の中にこのところ五十円玉が増えた
十歳の誕生日の登校班の集合場所の手前
水溜りの中に落ちている五十円玉を拾った
誕生日の朝にこんな奇跡あるかって
今思えば凡庸な日常の出来事に過ぎないのに
ただ俺は
三十年前のその光景を今でもありありと覚えていて
異物としての五十円玉が記憶に定着している
穴の空いた硬貨は世界的にも珍しいらしいが
そんなことは当然考えもしなかった
将棋でいえば桂馬のような存在感
あの穴にストローを通そうとしたこともある
今日まで俺は
煩わしくて嫌いだった
だけどそうじゃなくなった
愛おしいと感じるようになった