二〇一九年一〇月一八日(金)
黄色いシャツの男が
黄色い蝶を愛しむ
俺の背中の羽は
先の台風でボロボロだ
友達の車が燃えた
炎は黒い煙を吐き出して
俺たちをここから追い遣ろうとしている
すべてのことが同時に起きる
ドラッグとストリップショーが
博物館に飾られているその最中にも
他人の目はいつだって内側にあって
目の前にいる人は微笑みを返す鏡
秋の虫たちが暗闇を牛耳る
地表で一番好きな場所
体育座りして煙を見ている
思考よりも先に形を変える
絵の具
カメムシ
文字だけの本
我々はみな燃え盛る炎の住人
炭ができるまでの焚き火
リグレットは舟に似ている
それとも海原か
シンプルに山の頂で出会う
海面が赤いのは時間帯のせい
生き物の気配は特にない
生まれ変わるならクラゲがいいね
内なる声の所在は不確かに
風邪とは気づかずに公園のベンチで眠った
落ち葉とシンクロして進む
水飲み場が「休んでいけ」と誘う
言葉を持たぬ隣人
いつか俺を迎えてくれ
都会に棲む昆虫
九月の蚊に刺され
旅についてとイメージが加速する
あの黄色い蝶は
記憶の外からやってきた
心を奪われるとはつまりそういうこと
知らない味を口にして
立ち止まった子供が意味を超えてはしゃぐ
瞬間
瞬間
瞬間
下敷きになった新聞紙
拡散
拡散
拡散
シェアされるドーパミン
自転車で宅配されるガパオ
スクリーンの中のアフリカ
初めて訪れる渋谷の交差点に
咲き急ぐ
さくらが舞っている
二〇一九年一〇月一八日(金)