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詩

彼女は暗い所でばかり踊る

皿に盛られた牛タンを前に
「これだけの舌が私一人の一食なんだから
牛ってどれだけ殺されるんだろう毎日」
自分の舌をベロっと出しながら彼女は言う
 
「牛の舌って俺たちが思うより長いんだよ」
どこかで聞いたか読んだかの事を伝えると
少し動きを止めて徐に彼女は言う
「私って暗い所にいる方が安心するんだよね」
そんなことずっと前から僕は知っていたけど
「うん」とだけ返事をして一枚目のタンを食べた
 
それからどんな話をしたのかは思い出せない
風が強くて吸いづらいタバコをもみ消した後
食後の散歩と銘打たれた夜のお花見で
仮設トイレの影
薄っすらとした人気のない死角を見つけると
断りもなく彼女は踊り出した
 
それをただぼうっと見ている間
薄い雲の向こうの月明かりが強まって
言葉がただ言葉として
だからもう言葉と言うと違ってしまう感じで
目の前に現れた
 
彼女は暗い所でばかり踊る
そんなことずっと前から僕は知っているというのに

二〇二三年〇四月〇六日(木)

彼女は暗い所でばかり踊る

皿に盛られた牛タンを前に
「これだけの舌が私一人の一食なんだから
牛ってどれだけ殺されるんだろう毎日」
自分の舌をベロっと出しながら彼女は言う
 
「牛の舌って俺たちが思うより長いんだよ」
どこかで聞いたか読んだかの事を伝えると
少し動きを止めて徐に彼女は言う
「私って暗い所にいる方が安心するんだよね」
そんなことずっと前から僕は知っていたけど
「うん」とだけ返事をして一枚目のタンを食べた
 
それからどんな話をしたのかは思い出せない
風が強くて吸いづらいタバコをもみ消した後
食後の散歩と銘打たれた夜のお花見で
仮設トイレの影
薄っすらとした人気のない死角を見つけると
断りもなく彼女は踊り出した
 
それをただぼうっと見ている間
薄い雲の向こうの月明かりが強まって
言葉がただ言葉として
だからもう言葉と言うと違ってしまう感じで
目の前に現れた
 
彼女は暗い所でばかり踊る
そんなことずっと前から僕は知っているというのに

二〇二三年〇四月〇六日(木)

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