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詩

きみはぼくの手を握り

きみはぼくの手を握り(といっても手首だけど)、まるで万引きの現行犯をしょっぴくかのような勢いで、草むらの奥へとずんずん進んでいった。膝上まで伸びる茂みには、ところどころにトゲなのか種子なのか、鋭利な刺激が潜んでいて、ぼくはそれを感じる度に「イタい」と口に出してしまうのだけど、きみはぼくのことをまったく振り返りもせずに進むから、なんだか泣きそうな気分できみの後をついていくしかなかった。

季節はなぜか夏で、きみが誰なのかはっきりとはまだ認識できないのだけど、ぼくはきみにものすごく好意を抱いていた。その好意が性に由来するものなのか、慌ただしい草いきれに気圧されて考えるような余裕もなく、夏休みってこんなもんだよなぁと、あまりにも無責任な結論を青い空に浮かぶボッテリとした雲のせいにならないものかとシドロモドロしていた。

「もうすぐだからね」きみは、振り向きざまに言った。都合良くきみの向こうには夏の太陽が輝いていて、弾むように上下する表情はハレーションの中で輝くばかりだった。黒くまっすぐ伸びた髪が、汗を吸って重たそうに跳ねた。

ぼくは小さく頷いた。

きみの手を振りほどくこともせずに、「どこに?」などと、すべてをぶち壊してしまうような質問を口にすることもなく。

きみの向こうにあったはずの太陽は、見上げると、遥か上空からぼくら二人を見下ろしている。慌ててセミが一斉に鳴き出す。セミは「ミーン」とは鳴かず、敢えて言うなら「ギューイギューイ」と硬い体を絞るように鳴いてみせるのだった。「ちくしょう」なぜこの言葉がぼくの口をついたのか分からなかったけど、きみはまた振り返り「変わらないね」と笑った。ぼくは急に恥ずかしくなって、目線を外すと、股間が熱くなっているのを感じた。

セミの唸り声の向こうに、遠い波の音が聴こえる。

海はもうすぐそこにあるんだと、ぼくは思った。

二〇〇九年〇二月二八日(土)

きみはぼくの手を握り

きみはぼくの手を握り(といっても手首だけど)、まるで万引きの現行犯をしょっぴくかのような勢いで、草むらの奥へとずんずん進んでいった。膝上まで伸びる茂みには、ところどころにトゲなのか種子なのか、鋭利な刺激が潜んでいて、ぼくはそれを感じる度に「イタい」と口に出してしまうのだけど、きみはぼくのことをまったく振り返りもせずに進むから、なんだか泣きそうな気分できみの後をついていくしかなかった。

季節はなぜか夏で、きみが誰なのかはっきりとはまだ認識できないのだけど、ぼくはきみにものすごく好意を抱いていた。その好意が性に由来するものなのか、慌ただしい草いきれに気圧されて考えるような余裕もなく、夏休みってこんなもんだよなぁと、あまりにも無責任な結論を青い空に浮かぶボッテリとした雲のせいにならないものかとシドロモドロしていた。

「もうすぐだからね」きみは、振り向きざまに言った。都合良くきみの向こうには夏の太陽が輝いていて、弾むように上下する表情はハレーションの中で輝くばかりだった。黒くまっすぐ伸びた髪が、汗を吸って重たそうに跳ねた。

ぼくは小さく頷いた。

きみの手を振りほどくこともせずに、「どこに?」などと、すべてをぶち壊してしまうような質問を口にすることもなく。

きみの向こうにあったはずの太陽は、見上げると、遥か上空からぼくら二人を見下ろしている。慌ててセミが一斉に鳴き出す。セミは「ミーン」とは鳴かず、敢えて言うなら「ギューイギューイ」と硬い体を絞るように鳴いてみせるのだった。「ちくしょう」なぜこの言葉がぼくの口をついたのか分からなかったけど、きみはまた振り返り「変わらないね」と笑った。ぼくは急に恥ずかしくなって、目線を外すと、股間が熱くなっているのを感じた。

セミの唸り声の向こうに、遠い波の音が聴こえる。

海はもうすぐそこにあるんだと、ぼくは思った。

二〇〇九年〇二月二八日(土)

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