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詩

丘に茂っている木々を見上げていると

丘に茂っている木々を見上げていると、それらの木々の名前や、まだ咲いていない花の色のことなどを考えている自分にケドマポミオは気がついた。ケドマポミオは風景画をよく描いていたのだが、それは、風景に対峙する自分自身がもっとも世界に対して謙虚でいられるような気がしたからだった。ケドマポミオは木々の名前を正確に知らなかったし、木々そのもののことにも興味がなかった。しかし、ケドマポミオの筆は木々を捉える。木々は光の中で、淡く、渋く、揺らめくように存在を確立していた。

この瞬間を描きたい。そう思った時にはもう、その瞬間は消え去ってしまっていた。ケドマポミオはそのことに絶望することなく、そろそろ帰ろうと心の中で思い、帰ってセジービャを起こし、昼ご飯の支度を一緒にしようと考えていた。昼ご飯といっても、ベジーを蒸したものにビベガーを和えた粗雑なディッシュのことしかイメージできなくて、笑いからくる作用で小さく口元が緩んだが、ケドマポミオはその自分自身の姿態の変化にまったく気付くことはなかった。

両の手を空に掲げて、大きな伸びをした。肺を新鮮な空気が満たす頃、山々に生息する、さまざまな生命の声が、音像となり、幾重にも重なりながらケドマポミオを包んだ。オレがいる世界はどこにあるのだろう。ケドマポミオがそう考えたどうかは私には分からない。

セルマネロは机の上で読みかけの本に頬をベットリとつけて深い眠りに落ちようとしていた。

大きなトリが空をゆったりと旋回している。「ゆったり」とは、空の枕詞のようだとセルマネロは意識の外で感じた。

ケドマポミオは、ブーツに付着した乾いた泥を、片方のブーツのカカトで落とした。

波の音がケドマポミオを越えていった。

チマディンツェの鼻歌が誰もいない畦道のイントネーションのようだった。

二〇〇九年〇八月二〇日(木)

丘に茂っている木々を見上げていると

丘に茂っている木々を見上げていると、それらの木々の名前や、まだ咲いていない花の色のことなどを考えている自分にケドマポミオは気がついた。ケドマポミオは風景画をよく描いていたのだが、それは、風景に対峙する自分自身がもっとも世界に対して謙虚でいられるような気がしたからだった。ケドマポミオは木々の名前を正確に知らなかったし、木々そのもののことにも興味がなかった。しかし、ケドマポミオの筆は木々を捉える。木々は光の中で、淡く、渋く、揺らめくように存在を確立していた。

この瞬間を描きたい。そう思った時にはもう、その瞬間は消え去ってしまっていた。ケドマポミオはそのことに絶望することなく、そろそろ帰ろうと心の中で思い、帰ってセジービャを起こし、昼ご飯の支度を一緒にしようと考えていた。昼ご飯といっても、ベジーを蒸したものにビベガーを和えた粗雑なディッシュのことしかイメージできなくて、笑いからくる作用で小さく口元が緩んだが、ケドマポミオはその自分自身の姿態の変化にまったく気付くことはなかった。

両の手を空に掲げて、大きな伸びをした。肺を新鮮な空気が満たす頃、山々に生息する、さまざまな生命の声が、音像となり、幾重にも重なりながらケドマポミオを包んだ。オレがいる世界はどこにあるのだろう。ケドマポミオがそう考えたどうかは私には分からない。

セルマネロは机の上で読みかけの本に頬をベットリとつけて深い眠りに落ちようとしていた。

大きなトリが空をゆったりと旋回している。「ゆったり」とは、空の枕詞のようだとセルマネロは意識の外で感じた。

ケドマポミオは、ブーツに付着した乾いた泥を、片方のブーツのカカトで落とした。

波の音がケドマポミオを越えていった。

チマディンツェの鼻歌が誰もいない畦道のイントネーションのようだった。

二〇〇九年〇八月二〇日(木)

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