成城大学文芸学部創立70周年記念事業レクチャー&討論会「―写真と文芸の交わる場所―澤田知子再読」の討論に有希子が出ることになっていて、俺も以前成城で講演会をやったこともあって運営の方が「懇親会に御徒町さんもぜひ」と言っていくれていたらしく、どうせ家にいても子供たちとうだうだ過ごすだけだしと思ってたら同じ留守番組のコーヘーとコンコンが「なにしてる〜」って家に来たから連れ立って成城へ向かった。3時間を超える講演会を子供たちが見ていられるわけもなくほとんどの時間を成城学園の敷地と界隈で過ごした。俺が成城学園高校に進学したのはこの圧倒的に良い環境で、当時ななんとなく思っただけだったけど今ならはっきり分かるし、足立区の中学生がよくそのことに気づいけたと感心している。もともと勉強が嫌いで、嫌いだから息を止めるようにここで終わらせようと猛勉強をした中学時代。その理由で大学に付属で行けるところしか受けなかった。成績はうなぎ上りに上がって、結局いくつかの付属高校に受かった中でここを選んだ。自宅から学校まで電車を乗り継いで1時間半もかかるのに、それでも行きたいって親に言った。「お金持ちのいく学校だから、あんた恥かくよ」と母親に言われたけど、「そんなの大丈夫だよ」と振り切った。今思うと何が大丈夫なのか分からないが、実際大丈夫だった。その頃思ったのは確かに生活レベルは全然違うけど、金持ちなのは親であって、そこで出会う連中は特に変わらないし、どっちかっていうとぼんやりしてる奴が多かった。ちなみに当時ここがいいと思ったのは植栽と光だった。面接の時の夕暮れの廊下を今でも写真みたいに思い出せる。直太朗に会ったのもここだったし、千代田線の始発から終点まで毎朝乗った経験が、満員電車に乗らないで済む仕事をしたいと思ったのも、成城に通ったことに由来している。気づけば通っていたのは30年も前のことで、子供二人を連れて敷地を散歩していたら不思議な気持ちになった。数年前に建て替えになった要塞みたいな新校舎に当時の趣はないけど、空気感だけは残っていて、それって磁場みたいなものかなってコーヘーと話してた。思い出深い駅に向かう途中のローソンはガレット屋になってて「ここ昔はローソンだったんですよ。いつからこのお店あるんですか」って聞いたら「去年です」って言われて、最近かい!って心の中で突っ込んだ。