遅れて起きてきた有希子が「今日は家族で文化的なものに触れたい」と、「これは明確な欲望だ」と強めに主張してきたので、「矢吹さんの回顧展今日までだからどう?」と、壁に掛けてある以前個展で購入した「中也のサーカス」を指しながら伝えると「いいね」となり、神田まで出かける。車の中で何(娘)と「リンダリンダ」の替え歌で「カンダカンダ」を歌う。矢吹さんとは直太朗の仕事を通じて、けっこうやりとりをさせてもらったのは二十代の頃。東北沢の自宅で「森の人」の絵本の打ち合わせをした。「生きとし生ける物へ」のジャケット制作では失礼なことをしたと、思い出すと恥ずかしい気持ちになる。確か「中也のサーカス」は文人をモチーフにした個展に行った時、一目惚れして「これ購入してもいいですか?」と尋ねたら「あなたの所に行く絵だったんだ」というようなことを優しい笑顔で言われた。会場のカフェが混んでいて、まだ時間が早かったからととりあえず上野へ行く道すがら、後楽園の観覧車に惹かれそこで過ごすことにした。何にだけワンデイパスポートを購入し、夕方の安い時間になって俺もナイトパスみたいのを買って、乗りたい物に好きなだけ乗っていいと息巻いていたら、何のチョイスがけっこう地味に三半規管にくるヤツばかりで、後半はグロッキーだった。去年の誕生日にビッグサンダーマウンテンに乗ってからというもの「絶叫系には強い」と自覚を持った何は、遊園地ではけっこう攻めっ気が強い。俺もその昔は無限にイケた口なだけに、体力の衰えが恨めしい。バックダーン(後ろ向きに進むジェットコースター)からバイキングへの移動途中「パパ、さいっこうに楽しいね、しかも今日は土曜日!」という言葉が聞けて「なら、良かった」と思った。ところで、遊園地は文化的なものに括られるのだろうか。