免許を取得した俺たちは、昨夜からヤスが会員になっている宿がある八ヶ岳へ来ている。なんとその宿にはプライベートサウナもあり、サウナと水風呂があるウッドデッキのすぐ目の前には焚き火台が設えてあって、サウナ〜水風呂〜焚き火(外気浴)というサイクルを全裸でそのままいける。思えば、全裸で焚き火をした経験などこれまでなく、やってみたら、笑いが込み上げてきた。その笑いはおそらく、未知の体験への驚きと戸惑いが表層化してきたようなもので、別に可笑しかったわけではない。笑うという言語で、この異様な体験を俺たち楽しめてるよねってことをヤスと分かち合った。それと、何万年も昔からこの感じって人間がしてきたことだという事実に、厳かな気持ちになった。ヤスは一言で言うと変人で、あらゆることに拘りが強く、強すぎて人とうまく生活できず山の中で一人暮らしをしてる世捨て人のような風情がある。ということもあって、ヤスと旅をしていると22時には寝て6時に目を覚ますようなサイクルになる。朝はラジオ体操と散歩と変な呼吸法。夜は夜で筋力トレーニング。当然、付き合わなくてもよいのだが、なんとなく付き合っているとめちゃくちゃ健康体になる。朝のルーティンを済ませたあと、近くにある倉庫を改築したカフェで朝ごはんを食べ、のほほん文庫という本屋へ。品揃えもよく、欲しい本に制限をかけて悩んでいたら、気になる一冊をヤスが誕生日に贈るよと買ってくれた。値段は見てないけど、まぁまぁ高そうな本。欲しいけど自分では買わなかったろう物をもらえるプレゼントって一番センスがあると思う。世界中の奇人が辿り着いた山小屋のカタログ。ゆっくり読み進めよう。ということで46歳になった。正直、まぁまぁ生きた。